以前、サンチャゴ巡礼の機会に恵まれ、スペインのコンポステッラの大聖堂を訪れた。そこには、今日記念する聖ヤコボ使徒の遺体が収められているという。祭壇前には大きな香炉が吊るされ、ミサの終わりには、八人かがりで引かれるその香炉は、あたかも振子時計の振り子のように、祭壇前から左右に天井高く舞い上がる。香を入れて後、祭壇のすぐ傍から眺めたその様は実に壮観であった。
ところで、聖ヤコボはどんな人物だったのだろうか。今日の福音では、イエスと弟子達とのある問答に対して、イエスは、「・・・わたしの決めることではない。それは、わたしの父によって定められた・・・」と言われている。短いフレーズだが、イエスをよく表していると思う。自己本位ではなく、いつも父に結ばれ、父の御旨を遂行するイエスの姿が。さらに、イエスは「・・・異邦人の間では支配者たちが民を支配し、偉い人たちが権力を振るっている。しかし、あなた方の間では、そうであってはならない。・・・人の子が、仕えられるためではなく仕えるために、・・・同じように。」と力説されている。
聖ヤコボという使徒は、このイエスの姿にあやかって、宣教の場においては、神と他者のためにとことん生きた人物ではなかろうか。殉教、それはこの世の思いを捨て、しかしという方向転換をしてイエス・キリストに徹底的にしたがった生き方を生き抜いて行く時に生まれて来るのではなかろうか。
わたしたちも聖ヤコボ使徒の取り次ぎを願い、神の御旨に適った生き方が出来るようにしたい。
濱口秀昭
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