今日のみ言葉

今日の『み言葉』(聖書朗読箇所)をよく噛んで、
ゆっくり味わいながら頂くように致しましょう。
『み言葉』はリンク先「今週の聖書朗読」で読むことが出来ます。
どうぞご利用下さい。
2012/06/27    年間第12水曜日 列王記下 22/8-13;23/1-3 マタイ 7/15-20
 
 福音はマタイから「偽預言者を警戒しなさい」です。この部分7:15-20は新共同訳聖書では「実によって木を知る」になっています。マタイは「実によって木を知る」を語録資料から得た木と実の比喩の伝承に大きく手を加えて技巧的に仕上げ、読者の受ける印象を強くする一方、15節の書き出しに依って比喩を教会内の問題に適用して居ます。
 
 マタイは先ず冒頭に問題とすべき「偽預言者」の存在を端的に指摘し、命令形で強く注意を促して居ます。15節はマタイの編集文で在ると思われます、と言うのは、マタイに於いて「羊」とはイエスに養われるキリスト者を意味するからです。其れ故、羊の皮を被っている偽預言者は教会内の者です。偽預言者は表面的に見る限りでは、確かにキリスト者ですが、その正体は羊を食い在らず「狼」で在る事が暴露されます。マタイは16節で語録資料を利用していますが、「あなた方は、その実で彼等を見分ける」を20節で繰り返し、「偽預言者を見分ける」事の大切さを強調します。この二つの文で囲い込まれた17-18節では木と実の関係を肯定文と否定文で念を入れて教えて居ます。実は木の良し悪しを知る唯一の方法であり、この法則に例外は無いと。18節は語録資料が下敷きに在りますが、これをマタイは17節と対応する様に整えて居ます。そして悪い木に対する容赦の無い処分を述べます。此れは洗礼者ヨハネが民衆に終末の裁きを描き出しながら悔い改めを迫った時の言葉、「斧は既に木の根元に置かれている。良い実を結ばない木はみな、切り倒されて火に投げ込まれる」を借用しています。此処では神の最期の裁きから現在を見直し、教会内の者に向かって木をしっかりと識別する事、そして教会員達自身が良い木となる事を勧めます。
 
 これから先21-23節「あなた達のことは知らない」は朗読配分外ですが、警戒すべき「偽預言者」とは誰かを言います。それは教会内で現に活動している者で在るだけに事態は深刻です。偽預言者達はイエスに対して「主よ」と模範的な信仰の表明をなすのみならず、イエスの名によって預言、悪魔祓いによる病気の癒し、その他いろいろの奇跡を行う者であって、教会内で相当の影響力を持って居た事が推定できます。しかし、彼等はイエスに依って偽預言者として断罪されます。何故なら彼等の正体は「不法を働く者ども」、即ち律法を否定する者であり、マタイに依れば律法否定は愛の否定に繋がるからです。律法の本質は「人にしてもらいたいと思う事は何でも、あなた方も人にしなさい」と言う愛の戒めに在ります。其れ故マタイは律法はなお有効で在ると主張します。
 
 例え信仰が在り、数々の奇跡を行い得ても、愛が無ければ滅びるべき存在であり、従って木の識別の基準となった「良い実」とは、隣人愛の行為で在り、此れに依って最期の裁きでの運命が決められます。弟子達はイエスから悪霊を追い払い、病気を癒す権威を授けられましたが、その権威の行使は自らの名声や権力欲の為でなく、ただひたすら隣人愛の発露でなければ成らない。しかしマタイはその様な者ばかりが教会内に居るので無い事を憂慮し、警告を発しています。
 
飯田徹

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Last updated: 2012/11/30

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