今日の福音書では受難の朗読が行われます。イエス・キリストが十字架上の死を遂げるまでのプロセスが順を追って、詳しく記されています。
イエスを殺そうとするユダヤ人たちの叫び、その背後にある長老や律法学士、ファリサイ派の人々の陰謀、イエスを裏切り、銀貨三十枚の代わりにイエスを売った弟子のユダ、イエスに最後まで従うと言ったペトロの否認、「民のために一人の人が死んだほうが都合がいい」と言ったカイアファの思惑、自分の保身をはかろうとするピラト、様々な人間の思惑がそこに表れています。人間がいかに利己的な存在であるかがそこに表れています。
これらの人々の様々な思惑がイエスの十字架上の死の出来事に係わっていきます。しかし、十字架の出来事の根底には神の考え、神の御旨が秘められています。人間のエゴがひきおこした出来事の深みに神の愛の表われがあります。神がいかに人間を愛されているか、人間をいとおしんでいるかが見えてきます。私たち一人一人、イエス・キリストの担った十字架の意味をしっかりと黙想したいと思います。
鈴木英史
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