イエスは、手の萎えた障害者をいやされるに際して、まず群衆の「真中に立ちなさい」と言われました(マルコ3.3)。
病気や身体の障害は罪の罰だと考えられていた当時のユダヤ社会では、手の萎えたこの人はおそらく一度も人々の真ん中に立ったことはないでしょう。いつも人々の後ろに隠れたり、家に閉じこもっていたことでしょう。みじめな自分、軽蔑されるのが当たり前の自分、人並に幸福な生活を営む資格のない自分だと思っていたことでしょう。
その人に対してイエスは「真中に立ちなさい」と言われたのです。あなたも神に愛されている人間です。あなたもかけがえのない人間です。あなたも幸福な生活を営む権利を持っている人間だと宣言されたのです。
人間を民族や境遇によって差別し掟や習慣を最優先していた当時の指導者たちに鋭い一撃を加えたイエスの毅然とした態度でした。
こうしてイエスを殺そうとする機運が指導者たちの間で高まっていったのでした。
坂梨四郎
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