熱心に娘の病気の癒しを願うカナンの女に対して「子供達のパンを取って小犬にやってはいけない」と、冷たい感じのするイエスの言葉が返ってきました。「子供」はイスラエル民族を指しているのです。そして「小犬」は異邦人(外国人)を指しているのです。犬は今ではペットとして愛されていますが、聖書の中では忌み嫌われる動物でした。つまり、イスラエル民族に与えられる恵みを取り上げて、外国人に与えるわけにはいかないというのです。しかし、カナンの女はひるみません。「主よ、ごもっともです。しかし、小犬も主人の食卓から落ちるパン屑はいただくのです」と決して引こうとはしません。この言葉には娘の病気の回復を願う母親の必死の思いと、イエスへのゆるぎない信頼が感じられます。
このエピソ−ドのポイントは、イスラエル民族を優先し異邦人を排除していた当時の人々に対して、神のお望みは民族や宗教や文化の違いを越えてすべての人々が救いに招かれているのだという救いの普遍性を示していることにあるのです。そしてもう1つ、このエピソードには貴重な教えが含まれています。それは忍耐強く、あきらめずに粘り強く、信頼しながら祈るということです。
坂梨四郎
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